旭南歯科クリニック
DETAIL
岡山市の広大な田畑が広がる田園地帯に計画された、8つの診察室をもつ平屋の歯科クリニックである。周囲の集落に見られる伝統的な切妻屋根の風景を踏襲しつつ、8診という大規模なクリニックのヴォリュームが周辺環境に対して過大になることを避けるため、建物を東西の二つに分割した。さらにそれらを前後にずらして配置することで全体のヴォリュームを分節し、周囲の在来住宅が持つスケール感へと緩やかに調停させている。夕暮れ時を迎えると、美しく暮れていく空を背景に端正な切妻のシルエットが浮かび上がり、大きな開口部から漏れる温かな灯りが周囲の田園風景へと優しく溶け込んでいく。
二つに分けたヴォリュームは、東西で明確なゾーニングを行っている。西側のヴォリュームは、中央に消毒・技工スペースを核として配置し、その周囲に8つの診察室、X線室、相談室、技工室をレイアウトした。これらを回遊動線で結ぶことでスタッフの機能的な動線を確保するとともに、すべての診察室を建物の外周部に配置し、治療中の患者が常に眼前の水田や広がる風景を臨むことができる構成としている。一方、東側のヴォリュームには、敷地の中で最も見晴らしの良い場所に待合室を配置し、田園風景を切り取る開放的な空間とした。受付を挟んだ逆側には、院長室やスタッフルーム、更衣室、倉庫などのバックヤードを集約することで、患者の動線とスタッフの裏方動線を明確に分離し、機能的な医院運営を支えている。
内部空間は、外観のシンプルな切妻屋根の構成をそのまま反映させ、構造材である柱や梁を室内に現している。それらが温かみのある木のインテリアとなり、医療空間に自然の包容力と安心感をもたらす。日中の爽やかな景色から、夕刻の柔らかな斜陽が木造の骨組みに描き出す静謐な陰影まで、刻一刻と移ろう光と田園風景がこの場所に美しく重なり合う。ずらして配置された二つのヴォリュームが、訪れる人を優しく包み込みながら、地域に馴染む新たな風景の一部となる建築を目指した。
- 用途
クリニック
- 所在地
岡山県岡山市
- 竣工
2024年5月
- 規模
294㎡
- 区分
新築
- 構造
木造
- 写真
河田弘樹

