知想の家

DETAIL

大手出版社で編集長を務め、幼少期より活字や音楽を愛してきたご主人と、雑貨や民芸品、絵画などを大切に集めてきた奥様。本計画は、60代のご夫婦と息子さんの3人が、ご主人の定年退職と「家庭菜園を楽しみたい」という奥様の想いを機に、マンションからご主人の実家へと移り住むための木造平屋のリノベーションである。

設計当初、膨大なコレクションを「いかに収納するか」を求められた。しかし、収集されたコレクションはご家族の「知」であり、記憶が刻まれた「想」である。私たちは、好きなものに囲まれて暮らす喜びを提案し、「飾る」ことで思い出に寄り添う空間を目指した。

空間構成としては、南側の庭を感じられるようにリビングとダイニングを庭に面して配置し、フラットに繋がる大きなウッドデッキを設け、家庭菜園へと連続する動線を確保している。また、道路に面する北東側には玄関や水回り、個室を集約し、バッファとして生活のメインとなる空間の静けさを担保した。さらに、このリビングとダイニングの天井は屋根のラインまで高く上げ、丸太梁を含む既存の小屋組みを現しとしている。

玄関からリビング・ダイニングには、シームレスに壁面をめぐる構造用合板のオープン棚を設け、コレクションを「地層」のように積み上げている。コーナーを滑らかな曲面で繋ぐことで、空間を優しく包み込む構成とした。棚には下段に重いレコードや書籍、上段に軽いCDや文庫本を収めている。高さ方向のモジュールはレコードや書籍の寸法に加え、開口部に再利用した「既存の障子」の高さから決定し、ランダムな棚板のラインと古い建具との調和を図っている。